半年ほど前、筑波大の近くの掘っ立て小屋のようなラーメン屋で、非常においしいラーメンを食べた。
掘っ立て小屋のラーメン屋の場合、店主は頑固おやじがお約束で、割引券を出して注文したら、やはり、いやな顔をされた。
こちらもいやな顔をされないよう、ラーメンだけではなく手羽先も頼んだというのに。
しかし、これだけおいしいラーメンなら、まあ、いいか、と思った。
ラーメン屋を出た後、私はつくば市役所で用事を済ませ、大通りの雑居ビルに入った。
午後からエストニアの起業家のセミナーがあり、ついでに聞こうと思い、予約していた。
狭い教室は、筑波大の学生と思われる若い男女ばかり、30人ほどが床に座って騒がしかった。
椅子もテーブルもなく、床に座って話を聞くなんて、小学生じゃあるまいし、と思ったが、窓際にカウンターがあるので、そこで立って聞くことにした。
セミナーの講師は、実際にエストニアに自分の会社を設立し、ノマドとして活動する若い日本人男性であった。
90日の観光ビザで海外を旅しながら仕事をし、パソコン1台でインターネットビジネスをしているという。
楽しそうな話だが、エストニアはタックスヘイブン(税金天国)などではない。
エストニアの法人税は30%以上と高く設定されており、彼がエストニアに会社を持つメリットが私にはよく分からなかった。
彼が強調していたのは、会社設立のお手軽さであった。
エストニアの法人税は30%以上と高く設定されており、彼がエストニアに会社を持つメリットが私にはよく分からなかった。
彼が強調していたのは、会社設立のお手軽さであった。
ネットで申し込んで30分ほどで手続が完了し、エストニアに会社を持てる、あなたも社長になれるという。
まるで消費者金融の無人契約機で借金をする話のようではないか。
しかし、そこが若者から見ると魅力なのだろう。
さて、このエストニアセミナーで、私は筑波大の学生のDさんと知り合った。
Dさんは理系のエンジニアで、一流のキャリアの持ち主だが、大企業には就職せず、ベンチャー企業への就職が内定していた。
入社後もたまに連絡を取り合い、一緒に飲んだりもするが、近々、また一緒に飲む予定だ。
エストニアセミナーの起業家の話も、Dさんの話も、若者の話はワクワクしておもしろい。
それは、社会や他人を批判したり、愚痴るようなことがないからだと思う。
あきらめといった言葉とも無縁で、常に前向きである。
時には、若者にしかできない新しい考え方が提示されることもある。
私の話も真剣に聞いてくれる。
しかし、年長者と一緒に飲むと、なかなかそうもいかない。
お酒を飲みながら、最初は年長者の「ありがたい話」を聞かせていただき、そのうち、仕事や家庭や社会に対する愚痴が出たり、酔っ払ってとりとめのない話になることもある。
ただ、ワインをおごってもらえるのは後者である。
若者と飲む時は、私がおごらなくてはならない。
ああ、それは納得。
ためになる話は若者から聞け、きっと、そういうことなのだろう。