今日はSMBCトワイライトコンサートを聞きにいった。
SMBCトワイライトコンサートは、大手町の三井住友銀行のエントランスホール(アースガーデン)で開催される無料のコンサートである。
1ヶ月に1回程度開催されるが、クラシックを基本としつつも幅広く、ジャンルにこれといった決まりはないようだ。
今日は刀剣博物館と三井記念美術館で展示会を見てから大手町に行く予定を立てた。
刀剣博物館は両国の旧安田庭園に隣接しているが、今日の展示は「平成の名刀名工展」であった。
少数だが、いまも刀鍛冶職人は存在しており、コンピュータ制御では決してまねできない技術で手作りの日本刀を作っている。
しかし、細々とした伝統工芸を後世に残すのは非常に難しい。
刀鍛冶も他のマイナーな伝統工芸と同様に商売として成立させるのは難しく、ほとんどの場合、自分の代が途絶えると終わりで、その技術も途絶えてしまう。
どうにかしてこの技術を残そうとしているが、なかなかうまくいかないようだ。
博物館の1階には広々とした休憩室があり、隣の旧安田庭園がよく見える。
展示を見た後、私はここでジュースを飲んでひと休みしたが、庭園を眺めているうち自分も入りたくなり、園内をぐるっと散歩した(なお、入館料は無料である)。
その後、両国駅の反対側に行き、ラーメン屋「欽福」で大盛りのもやしラーメンを食べた。
ここのラーメンは見栄えが悪く、あまりおいしそうに見えないのだが、実は、おいしいのである。
両国から地下鉄に乗り、三越前の三井記念美術館へ。
今回の三井の企画展は「高麗茶碗」である。
この美術館は日本橋の三越本店からすぐの場所にあり、和服姿の中高年の女性が多く来ていた。
茶碗の展示会に似合う女性たちが、興味深そうに見回っていた。
しかし、そもそも茶碗などを見て何がおもしろいのだろうか。
茶碗のおもしろさは私もいまだによく分からないが、正直言うと、あまり興味がわかない。
以前、出光美術館の学芸員が、やきものは実用美だと言っていた。
実用美とは、例えば私が芸術的なワイングラスを買ったなら、美術品のように飾って眺めるだけではなく、そのワイングラスで実際にワインを飲んで楽しむということである。
したがって、こうしてショーケースのなかの茶碗を眺めるのではなく、これでお茶を飲んでこそ本当の意味での茶碗の鑑賞なのだが。
まあ、ペットボトルのお茶を持ち歩いて飲めば、今の時代は十分だし、家でお茶を飲む場合はニトリの茶碗でも用が足りる。
三越前駅から大手町駅に行った。
しかし、アースガーデンをのぞくと、まだ会場が開いていなかった。
もしかして並んでいるかも、と思ったが、それほど人気のコンサートでもないのだろうか。
大通りを東京駅まで歩き、暗くなるまで丸ビルの中で時間をつぶした。
ここには、東京駅の赤い駅舎が一望できるテラスがあるのだが、私はそこでしばらく風に当たって過ごした。
その後、エスカレーターで1階におりたら、ラグビーのワールドカップのトークショーをしており、ホリエモンが熱心に話していた。
三井住友銀行のエントランスホールへ。
今日のSMBCトワイライトコンサートは、クラシックではなかった。
「ザッハトルテ」という初耳のグループであった。
下町の歓楽街を回るミュージシャンのような、あるいは、レトロ喫茶に似合う音楽は、センス抜群で、洒落ていた。
ザッハトルテの経歴を見ると、芸大などで音楽の専門教育を受けたわけではないようだ。
しかし少なくとも、3月と7月にライブを聞いた黒色すみれは芸大出身だが、彼女たちよりもザッハトルテの方がセンスもテクニックも上手であった。
東大を出てもホリエモンのように頭が良いとは限らない。
芸大を出ても音楽や絵が上手とは限らない。
まあ、ようするに、私たちは勝手な思い込みをし、実際には評価が間違っていることが多いのだが、今日はそんなことを思ったのだった。
客席はザッハトルテの演奏に拍手喝采、大盛況となった。
今日の聴衆は、ふだんクラシックコンサートを聞いており、告知を見ていない人はクラシックのつもりで来たと思うが、意外にもザッハトルテの軽妙洒脱な音楽に心を奪われただろう。
私もその1人である。
ここはエントランスホールなので、ライブのあいだ、仕事帰りの銀行員が何人か通りかかった。
いつもは出口に急いで消えていく人の流れが、今日は興味深そうにしばらく立ち聞きを繰り返していたのが非常に印象的だった。