今日は銀座ヤマハホールで、ベルリンフィルスペシャルアンサンブルのコンサートがあるのだが、夜7時からなので、昼間いくつかの美術館を回った。
歌舞伎が江戸時代からの大衆文化であるのに対して、大名の式典などにも登場する能は、お上の文化である。
その点、能は歌舞伎よりも、おカタい芸術と言えそうだが、私にはどちらも役者が唸るイメージしかなく、ただ展示室に飾られている衣装の違いを観察するのみであった。
能の装束の方が総じて作りがぜいたく、抑制的な美をたたえており、歌舞伎衣装よりも重々しい。
これは恐らく、能はお上の文化なので、幕府の役人が能装束に多くの予算を付けたからではないか。
地下鉄で新宿から銀座へ。
松屋の銀座キャピタルで30分ほど休んでから、銀座4丁目の交差点のソニーイメージングギャラリーに行った。
モノクロ写真の展示会をしており、ちょうど写真家本人(山下恒夫氏)が在廊していたので、少しばかり話した。
その後は開場時間近くまで、向かいのエクセルシオールカフェで休んだ。
6時過ぎ、そこから歩いてすぐの銀座ヤマハホールに入ると、すでにエレベーターホールの入口には列ができていた。
私はベルリンフィルスペシャルアンサンブルは初めてだが、メンバーは明らかに超一流だけの集まりである。
私のクラシック音楽の師匠(Iさん)によれば、チケット代が高かろうが聞いて損はない、ということだった。
なので、今日は「鉄板」コンサートということになるが、Iさんは自身のお友達のクラリネット奏者フックス氏の演奏をよく聞いてくるように、と私に言った(なお、私は日本人の清水直子さんにも注目していた)。
ホールは満席。
他の人も、チケット代が少々高かろうが、聞き逃せないと思ったのだろう。
フックスは2曲目から登場。
彼のクラリネットは躍動感にあふれており、自由奔放で型破り、これはうまい、と私は納得した。
ただ、3曲目のバルトークの演奏を終えると、客席に向かってバイバイをして舞台から消えてしまった。
その後の曲はフックス以外のメンバーで演奏し、最後の曲が終わるとメンバー全員がすぐにいなくなった。
アンコールもなく終わったのは残念だった。
なお、ビオラ奏者の清水直子さんは、このメンバーの中でも遜色のない演奏をしていた。
さて、この鉄板コンサートのチケット代は1枚15000円である。
海外オペラでもなく、海外オーケストラでもない。
しかも、短時間で、あっという間に終わった。
高すぎるとも思えるチケット代だが、まあ、私は妥当な値段だと思う。
ただそうはいっても、15000円もあれば上野の奏楽堂などで、芸大生の演奏を10回近く、通って聞けるお値段である。
そこで私は以前、Iさんにこう聞いたことがある。
「上野の奏楽堂などでたまに聞くと、芸大生の演奏もそこそこだから、安くて何度も聞きに行けてお得なような気がするのだけど、、、」
しかし、それを聞いたIさんは、ピシャリと私にこう言い放ったのだった。
「あのね、芸大生のヘタクソな演奏を何度聞いたって、音楽も芸術も少しも分かりゃしないのよ。音楽と芸術のことが知りたければ、ただ一流演奏家のコンサートだけを聞きに行けばいいのです。一流演奏家以外のコンサートは、お金と時間の無駄。」
さすが、Iさんは本音の人であるが、これ以降、私は上野の芸大の奏楽堂のコンサートにはほとんど行かなくなった。