しかし、地方創生のためには観光立国は死語になっては困る言葉である。
今回は観光立国について取り上げようと思う。
丸の内の慶應のビジネススクールでは、夕学五十講という定期講演会があり、毎回異なったゲストが登壇する。
会場は新丸ビルの7階の大ホールで、新型コロナウィルスの影響もそれほどないと思うのだが、今年の開催はどうなのだろうか。
去年まで、私は前後期5~6回ほど聞きに行っていた。
ただ、少々単価が高いので厳選する必要があり、人気のゲストだと丸ノ内という場所柄、すぐ満員となってしまう。
さて、観光立国というと、去年ここでデヴィッドアトキンソンの講演会を聞いた。
この講演は、前期の中で最も良かった。
タイトルは「日本の魅力、その活かし方と伝え方」、ようするに観光立国論である。
アトキンソンはゴールドマンサックスのアナリスト出身。
彼の観光立国論はやはり、「お金」をめぐる生々しい話と挑発的で刺激的なセリフで始まった。
「みなさん、そもそも、なぜ観光立国をするのデスか!?」
「・・・・・・」
「もちろん、札束のためデスよね!?」
「・・・・・・」
母国イギリスでは、外国人観光客は札束のように見えると言っていた。
アトキンソンが何を言いたいのかというと、観光立国の最も重要なポイントは「外貨の獲得」なのである。
まあ、北朝鮮が典型例で、分かりやすいと思うが。
しかし、日本人は豊かであるため、そのような自覚がない。
外貨はトヨタやソニーが稼いでくるものだと思い込み、自己満足的な観光立国をしている。
いやいや、観光立国というのはね、実は輸出企業が外貨を稼いでくる話と同じことなのですよ。
例えば地方の特産品を外国人に売る場合、訪問販売か店頭販売か、その違いなのですね。
アトキンソンはそのことを札束という言葉で表現したのだと思う。
だが、会場の聞き手に通じただろうか。
観光立国における札束の問題は、日本人の美徳として避けられがちだからである。
ただ、本来その論点は避けて通れないどころか、最初に議論しておくべきことだ。
アトキンソンのアプローチはいたってシンプルである。
カネを落とす連中(外国人観光客)をいかにして呼び込むか、そのための手段として地方に何を準備してサービスを展開すれば最も効果的なのか。
この点、アトキンソン説によると、五つ星ホテル、カジノ、スキー場、ゴルフ場、ビーチの建設だという。
なるほど、よく分かった!!
ようするに、アトキンソンは自分の行きたい場所を日本にもっと作ってくれ、自分は退屈である、と外国人を代表してひと言モノ申したいということなのだろう。
また、アトキンソンは、美術館、博物館、お城、寺社、こういった地方の文化財、文化施設は外国人観光客にとっても興味深いとはいえ、誰もが見たがるような観光資源ではない、と釘を刺した。
経済効果の点からも、前記のものと比べて劣るので~とも言っていた。
なるほど、そうかもしれないが、、、
でも、アトキンソンは文化財の修復を請け負う建築会社の代表取締役でもあるのだ。
私は、それが自らの首を絞めるような発言にも聞こえておもしろかった。
アトキンソンさんって、私みたいに正直な性格なんですね~!!
ああ、そういえば、パソコンの過去の写真フォルダに、御殿場のゴルフ場(三井住友VISAマスターズ)の記念写真があったのを思い出した!!
最後に、ご紹介しておこう。
バブル崩壊から30年ほどがたち、日本のゴルフ場もすっかり減ってしまったが、多くの外国人観光客がゴルフに訪れれば、また昔のように地方が活性化するのではないだろうか。