※2020年のお蔵入り記事の再公開
台風が東にそれて土曜日の午後は雨上がり、私は予定通り、取手商工会の講演会を聞きにいった。
今春、私のワインバーのオープンの件をめぐって知り合った、大阪人の経営コンサルタント吉田雅紀先生の講演会だ。
私は詳しくないが、起業支援の経営コンサルタントとしては、草分け的存在のようである。
この辺りの田舎だと、たいていの講演会は期待外れで終わるのだが、吉田さんの話なら、まあ、一度くらい聞いてもいいかな、と思った。
散歩がてらに行ける場所で、聴講料はたった1000円。
商工会には時間ギリギリの到着。
2階の会議室の聴講者は20名ほどだった。
眼鏡をかけた60代後半の男性が吉田雅紀先生であるが、関西弁で声が大きく、誰かと話せば非常に目立つ。
ただ、この日は、講演が始まるまで静かに座っていたので、最初はあの人が吉田さんだったかしら?と思った。
まずは、物静かな語り口のモデレーターの男性が挨拶をした。
その後、早速、吉田さんの出番となった。
吉田さんはスッと立ち上がり、元気で早口の関西弁で喋りはじめたので、私はすぐに目が覚めた。
私はメモ帳を開き、ペンを持った。
吉田雅紀流の起業論の講演の始まりである。
ただ、経営コンサルタントの世界では結論を先に言うこと、ひと言でまとめることが重要のようである。
私なりに講演を要約すると、こうなる。
個人が起業するならニッチ、それに尽きる!
以上。
ニッチでも、可能なら黎明期の新分野がいい。
新分野なら、競合が少なく見込み客が多いからだ。
また、数年やれば専門家を名乗れたりもするし、10年たたずとも権威として認められる可能性がある。
場合によっては、名刺に「カリスマ〇〇〇」と書いて偉そうにできる!?
まず、小さく狭く、身の丈から始めよう。
あなたの住む町のオンリーワンでいい、と吉田さんは言う。
その場所で一定のポジションを獲得できれば、高収入かどうかは別として、食うには困らない。
もう1つ、吉田さんが話していたのは自己管理の大切さだ。
例えば、今日は雨だから営業に行かなくていいや。
これでいいのか、ということである。
自営業は、客がいれば忙しいが、そうでなければ、ひまである。
だから、自己管理ができないと非常にマズいことになるのだ。
自宅でもスタバでもいいが・・・レンタルオフィスもいい・・・ちなみに、上記写真は取手駅前のレンタルオフィスである。
ここに入居し、自宅から仕事に通うのも、自己管理のためにはなるだろう。
その他に興味深かったのは、大阪の旦那たちは、本業で儲かると小料理屋を手を出すという余談である。
そこから、吉田さんは多角経営の是非について言及した。
本業と無関係な事業への多角化は良くないが、本業の派生事業などはOKです、と言っていた。
前者は本業を弱体化させる、後者は本業の奥行きを広げるからである。
本業の奥行きを広げる・・・吉田さんの表現はなかなか面白いが、私は、相田みつ美術館で見た詩の一節を思い出した。
確か、「間口を広げれば奥行きは浅くなる」というものだった。
相田みつをは経営者ではないが、さすが、大事なことは心得ている。
物事は広く浅くでは、うまくいかないのである。
狭く深く掘り下げるのがいい、という意味合いだ。
ほかにも、吉田さんの経営していたアパレル会社が破綻した話や、それにまつわる泣ける話などもあったが、元気な関西弁で喋るので、胸にぐっと来なかった。
そこだけは物静かな語り口の最初の司会者の男性が適任であったが、彼はもう、教室の後ろの方で聴衆のひとりとして耳を傾けていた。
「創業スクール」と銘打たれた取手名物の起業家ゼミは全5回のコースである。
私は用事があり、吉田さんの独演会をスポットで聞いただけだが、これから何かやってみたい人は、入門編として全ての回に参加するとよいだろう。