2021/01/17

冒険投資家ジムロジャーズの心構え

リーマンショック後のジムロジャーズは、一貫してコモディティー、ゴールドを推奨していた。
FRBなどの世界の中央銀行の金融緩和制政策(QE)を痛烈に非難していた。
QEにより、お金の価値(主としてドルの価値)が下がるとインフレーションが起こる。
ということはむろん、コモディティー、ゴールドが上昇するはずだからだ。

しかし、相場の実際は理屈通りではない。
好景気なら株価が上昇し、お金の価値が下がればやはり株価も上昇するのであり、振り返ればリーマンショック後は株式だけを買う方が良かった。

なあんだ、答えはいつもシンプルじゃないか。
ジムさん、あなたは考えすぎだよ。

偉大なジムロジャーズにケチをつけたいわけではない。
が、私は彼の話が少しばかり間違っているとは思っていた。
コモディティー、ゴールドは、貨幣価値が毀損されるだけではなかなか上昇しないものなのだ。
これらが上昇するためには、「株式バブル」にならないとだめである。
したがって買う順番としては、リーマンショック後は株式の買い、株式バブルで株式を売り抜け、コモディティー、ゴールドなどを買う、という流れとなる。
ただ、2020年3月のように株価が大暴落した場合は、株式のバーゲンセールを思い切って買う方に投資妙味がある。
そのため、素晴らしい商品相場は本当に短い間しか続かない。
したがって、コモディティー、ゴールドの買いは、ジムが言うほどの投資妙味があるとは言えず、投資の初心者には推奨すべきことではないと思う。
株式なら定期的に配当があり、インフレヘッジをするならコモディティーやゴールドよりも、賃料収入のある不動産を買う方がシンプルで直感的だと思う。


ジムロジャーズ「ジムロジャーズ 中国の時代」「ジムロジャーズ 世界を行く」「ストリートスマート」


さて、ここまでは、偉大なジムロジャーズにケチをつけてしまったが、実は、私の書斎の本棚には、ジムロジャーズの著書がひととおり揃っているのである。

ジムロジャーズ「中国の時代」
ジムロジャーズ「大投資家ジムロジャーズ世界を行く」
ジムロジャーズ「冒険投資家ジムロジャーズのストリートスマート」

などなど、緊急事態宣言のさなか、週末の夜は書斎の本棚をのぞいて本を再読するようになったのだが、彼から学べることは恐らく、推奨銘柄や売買のタイミングではなく、投資家としての心構えだと思う。
駆け出しのころの彼は、ジョージソロスと一緒にクオンタムファンドを運営しており、このヘッジファンドは70年代を代表する元祖ヘッジファンドとも言うべきところであるが、彼はこの時、航空株の買いで大儲けをしたという。
私は当時の考え方をよく知らないが、航空株は今でも、おいしくない銘柄のはずだ。
そもそも航空会社のビジネスモデルが悪いからだ。
しかも当時は原油高だった。
となると、どうして航空株を買うのだろう、という疑問が生ずるが、そこは本を読めば分かる。
ようするに、他人をまねるマインドがだめなのである。

もう1つ、彼がすごいのはバイクと車で世界一周の冒険旅行をしたことである。
ぶ厚い冒険旅行の本を読めば、人生の可能性と素晴らしさを感じることができる。
旅の過程で彼は、発展途上国の中国の未来を予見し、中国株投資を推奨するようになったのだが、自分の足を動かして得た投資情報、この目で見て感じた投資情報は、最も信用できるものだと言える。
ようするに、他人に頼るマインドもやはり、だめなのである。

どんな時も他人をあてにしない、彼のマインドはこれに尽きる。
彼の著書に「娘に贈る12の言葉」という本があるのだが、彼は自分の娘にも独立自尊の精神を教えているのだった。
新型コロナウイルスの危機で、相互扶助の精神は必要不可欠だ。
しかし、危機の時こそ、他人をあてにせず、自分の信念で行動するという精神も重要だと思う。
そうであるなら、もちろん、政府をあてにしすぎてはいけない。
それは本当に重要なことだ。
10万円の給付金をもらっても独立自尊の精神を持ち続けたいものだ。