2021/06/20

ふつうのラーメン

以前ブログ記事で、おいしいラーメン、まずいラーメンのことを書いた。
今日は、ふつうのラーメンのことを書こうと思う。
まず、最近のラーメン屋は凝ったものばかり作るので、ふつうのラーメンが食べたい時はどうすればいいのか、という問題がある。
私がふつうのラーメンで思い出す店はアメ横の「昇龍」である。
ほかにも、大学の学食にでも行けば、ふつうのラーメンが食べられそうだ。


昇龍


昇龍


こないだ男友達と浅草で会い、お昼をどこで食べようかという話になった。
私が天ぷらがいいと言うと、きのう天ぷらを食べたばかりと言われ、彼がたまに行く仲見世のおいしいラーメン屋に連れていってもらった。
仲見世には松屋の前の横断歩道から入り、今半本店を通り過ぎると、その先に洒落た和風だしのラーメン屋があるのだが、ここがいいなと思ったら、このラーメン屋ではないと言われた。
和風ラーメン屋の十字路を右に曲がると、その少し先に「餃子の王様」という昭和の下町の大衆食堂を思わせる古くさいラーメン屋がある。
彼はその冴えないラーメン屋の建物を指さした。

「ここだよ、懐かしいなあ。」
「えっ、ここに入るの??」(外まで餃子くさい、、、)
「そうだけど。」

店構えを眺めた私は少し腰が引けた。
が、友達のおすすめである。
さっきの和風の店の方がおいしそうだとも言えない。
恐る恐る店内をのぞくと、昼間なのに薄暗く(日当たりが悪い)、狭苦しい感じがした。
おじさんたちの話し声が聞こえ、いかにも雑多な下町の店だと思った。

「ここはねえ、餃子もおいしいが、シンプルな昔のラーメンが食べられるんだ。」
「ほう、ふつうのラーメン?? それはちょっと興味深い。」
「そうだろ?? 今時珍しい、全てが昭和風なんだ。」
「私たちのような昭和生まれのおじさん向けかな。」
「そういうこと。では、入ろう。」

しかし、白い仕事着の男性が現れ、満席なので店外で少し待つように言われた。
まあ、この日の私たちは5分ほどで入店できたのだが、2階の客席でラーメンを注文した後、眼下の道路を見下ろすと、ランチタイムのピーク時には会社員などの長い行列ができていたので、ここはかなりの人気店なのだろう。
私たちは小さなテーブルに向かい合って座り、割烹着の女性に、ふつうのラーメンとニンニク餃子セットを注文した。

「なんか、あの人、「北の国から」のラーメン屋の人みたいだね。」
「最近死んだ田中邦衛の長編ドラマだっけ??」
「そうそう。でも、ここはいかにも「三密」だよねえ。」
「食べたくて来てるんだから、もはや誰も気にしていないけどね。」

いまは新型コロナウィルスのこともあるから、人々には密を避けたいニーズがあるはずだ。
しかし、それでも人間は食欲には勝てない。
おいしい店には、このように長い行列ができ、たとえ狭くても入りたがる客がいる。
誰もがすでにお気付きかと思うが、いま密になっている飲食店は「おいしい店」に違いないのだ。
反対に、いまスカスカの飲食店は、おいしくない店か、たいしたことがない店なのだ。
最近の数少ない外食を思い出すと確かにそうだった。
さて、ここのラーメンと餃子はどうだろう。


餃子の王様


餃子の王様


おお、運ばれてきたラーメンと餃子、あまりにもふつうの外見で、がっかりである。
まったくワクワクドキドキもしないぞ。
だが、食べてみるとなかなか味わい深いのだ。
特にニンニク餃子はインパクトがあり、おいしかった。

「この餃子はニンニクたっぷりだから要注意だぞ。」
「こりゃ、食後にガムを噛まないと匂う、、、」
「でも、マスクをしているから問題ない。」
「そ、そうか!!」

周囲を見ると、老夫婦もカップル客も、テーブルに大皿を数枚重ね、さっきからニンニク餃子を食べまくっているではないか。
口臭を気にして日頃食べたいのに避けたりもする餃子。
どうも新型コロナウィルスは、この店にはむしろ追い風のようである。