今日は、最近終わったアーティゾン美術館の展示会のことを書こうと思う。
前回のメインの展示会は「印象派画家たちの友情物語」、その順路の最後に特設コーナーがあって、「挿絵本に見る20世紀フランスとワイン」というサブの展示会もしていた。
私は11月、こちらを目当てに見に行った。
3月にワイン友達のAさんと一緒に来て以来、訪問は2度目だが、常設展示の作品が多く、今回はほとんど写真撮影をせずに見終わった。
では、まず20世紀フランスのワイン文化について見ていこう。
今でこそフランスワインというと高級品のイメージがあって、総じて品質もよいと思われているが、かつてのフランスでは、葡萄畑の病害(フィロキセラ)と経済の低迷により、劣悪なワインもたくさん作られていた。
偽造ワインとも呼ばれるその手のワインは、水で薄められたり、古いワインとブレンドされていたり、添加物で着色されていたりすることもある。
しかし、これではフランスワインのブランドイメージが傷付き、まともなワインも信用を失ってしまう。
そこで、政府が法律でワインのブランド化を推進したのだが、原産地呼称制度(Appellation d'Origine Contrôlée(AOC))はそういう流れの中でできあがったルールである。
この原産地呼称制度、AOCというのだが、簡単にいうとBORDEAUX(ボルドー)の表記があるワインはボルドーのワイン、というルールである。
当たり前のルールだと思われるかもしれないが、ワイン法で規制されるまでは必ずしも当たり前ではなかった。
アペラシオン・ドリジーヌ・コントロレ(仏: Appellation d'Origine Contrôlée; AOC フランス語発音: [aose]、アオセ)とは、フランスの農業製品、フランスワイン、チーズ、バターなどに対して与えられる認証であり、製造過程および最終的な品質評価において、特定の条件を満たしたものにのみ付与される品質保証である。日本語に翻訳すると「原産地統制呼称」「原産地呼称統制」などとなる。フランスの法律では、AOCの基準を満たさないものは、AOCで規制された名称で、製品を製造または販売することは違法である。フランスの原産地呼称委員会(Institut National des Appellations d'Origine, INAO)が管理している。
(中略)
AOC製品の印として、ワインのラベルには必ず「Appellation Contrôlée」または「Appellation d'Origine(生産地)Contrôlée」の表示を入れる。 生産地の部分には、「Bordeaux(ボルドー)」などの地方名、「Médoc(メドック)」などの地区名、「Margaux(マルゴー)」などの村名が入る。ブルゴーニュ・ワインの場合は、さらに「Romanée Conti(ロマネ・コンティ)」などの畑名まで入る。AOC法では、品質を保持し、産地名称を保護するため、ブドウ品種による最低アルコール度数の規定、最大収穫量、栽培法、剪定法、また地方によっては熟成方法なども規制している。フランスワインの他、ブランデー、ラム酒にもAOCが制定される。
(Wikipediaより)
さて、このような原産地のブランド化で、以降のフランスワインは地方ごとのワインの特性を重視する嗜好の時代となっていった。
シャンパンで有名なシャンパーニュ地方の絵では、グレーと白の色調でまとめられた画面によってその特徴である白亜質の土壌が表現されています。アルザス地方の葡萄畑に描かれているのは、モミの木です。モミが葡萄の若い枝に触れることで葡萄がより甘くなり透明感のあるワインができる~
(アーティゾン美術館「挿絵本に見る20世紀フランスとワイン」の資料P5より)
もっとも、フランスでは日本とは違って、ワインは生活に欠かせない水(生命の水)のようなもの、街中で気軽に飲めるものでもある。
作家ジョルジュデュアメルはこう述べている。
ワインは自分だけの楽しみではありません。社会的な楽しみなのです。まさに、人と人が心を通わせるために欠かせない要素のひとつなのです。
(アーティゾン美術館「挿絵本に見る20世紀フランスとワイン」の資料P4より)
つまり、ワインは人々のコミュニケーションツール、ということだ。
しかし他方で、一部のワインはブランド化し、人々の手の届かない高級品となった。
こういったワインを楽しむワイン愛好家の飲み方が、「ワイン閣下」というユニークな本で紹介されていた。
(アーティゾン美術館パンフレット「挿絵本に見る20世紀フランスとワイン」P9より)
このおじさん、何だか眼つきが怪しいが、、、ワイン愛好家って、こういう人だと思われているのだろうか。
なお、この絵を描いたのはシャルルマルタンというフランスのイラストレーターだそうである。