2024/06/08

アートホテル行(1)BNAWallアートホテルイン東京



銀座三越の交差点。
10時を過ぎると、ガラガラだ。

会社帰りと思われる男女のカップルが、タクシーを止め、乗り込んだ。
これから、2人は、ホテルかどこかに行くのだろうか。

私は銀座線に乗るために、地下への階段をおりた。

不自由で息苦しい関係から逃れたい場合、愛し合うふたりは、どうすればいいのか?
もちろん、過激な選択肢は避けた方がいい。
ゆるやかで平和な選択肢のひとつ、それがアートだ。

ともに、アートの世界に逃れる。

すると、自分の物差しを自分で作れる、自由で心地よい、ご機嫌な恋人のできあがりだ。
つまり、愛とはそのようなもので、アートの世界には愛の秘密があるのではないだろうか。
(2024/06/06「アートの世界に逃れる?」)




今年も、執筆の依頼があり、現在その準備中である。
去年は、お台場の近くの某ホテルで書いたりしたが(上記写真)、、、今年はどうするか。

そうだ、今年は、アートホテルに行こう!!(*'ω'*)

考えてみると、作家とアーティストは、よく似ている。
執筆は、アートと同じ創作活動で、自由かつ孤独である。
だから、私にも、「アートの世界に逃れる」ということの趣旨が、あてはまるのではないか。
そう思い、早速、私は、滞在候補先の「いいアートホテル」探しを始めた。




6月のある日。
私は、取手駅10時24分発の常磐線特別快速に飛び乗った。

実は最近、私は、1つのマイルールを決めた。
私の場合、公務員や会社員などとは違い、毎朝同じ時間の電車に乗ることはなく、アポイントメントがなければ時間にルーズになりがちである。
生活のリズムが乱れないよう注意をしているが、毎朝乗る電車が同じなら強制力があるということを思ったのだ。
そこで最近は、都内に出るときは、取手駅10時24分発、品川行の特別快速に乗る、というマイルールを作り、実行している。

この特別快速だと、上野駅まで35分、品川駅まで49分で着いてしまう!

私は、上野駅で下車し、銀座線に乗り換え、三越前駅へ。
今回は、日本橋大伝馬町のBNAWallアートホテルイン東京に向かった。
2021年以来、倉敷安耶さんの個展以来の訪問である。
私は、当時と同じく、コレド室町の脇の福徳神社で、おみくじを引いてからホテルに向かった。








おお、2021年のオープン当初とは違い、メニューに、ランチセットが出ている!

2021年はコロナ禍で、飲み物の提供のみだったと記憶するが。
「スタンドビーエヌエー」の店のカンバンは、ラウンジの片隅に置いてあり、ホコリがかぶっていたやつだ。
何やら感慨深いが・・・ちょうどランチタイムなので、ホテルのラウンジで昼食を食べようとした。
しかし、本日のランチメニューはカレーライスセットのみで、私は、外ではカレーライスを食べない人なのである。
結局、私は、チェーン店の蕎麦屋に入り、簡単なお昼を済ませた。




その後は、銀座の歌舞伎座の裏手のM84ギャラリーへ。
誰かから名前を聞いたことがあり、場所だけは知っていたが、1度入りたいと思っていた。
ただ、入口の狭い雑居ビルの5階にあるので、通りがかりには入りにくかった。

看板を見ると、今回は、著名な写真家大坂寛氏のヌード写真展で、入場料800円とある。
考えようによっては、なおさら入りにくい。
しかし、いまどき、ヌード写真の企画展など見かけないので、思い切って入ってみよう。




ギャラリー内は密閉された空間で、それほど広くはなく、モノクロのヌード写真と風景画、約30点が展示されていた。
私1人が客で、オーナーで高齢の男性が1人。
美女のヌード写真展なのに、男のふたりきりでは、あまり居心地がよくない。
私は、作品を見ている間、彼からそれとなく監視されていた。

なぜ私のことをそこまで気にするのだろう?

私は、帰りがけ、オーナーと少し世間話をしてみた。
ヌード写真展なんて今どき珍しいですね、というと、オーナーは、どこのギャラリーも近所や警察を恐れてやりたがらない、と答えた。
コロナ以前は、たまにヌード写真展も見かけたが、コロナ後は絶滅した、そう言って、オーナーはため息をついた。

ここでひとつ面白かったのは、入場無料だとヘンな客が来て、警察を呼ばれることがあるので、トラブル防止のため入場料を取る、ということだった。
なるほど、、、私を監視していたのは、そういうことか。

しかし、この問題について私なりに思うことは、ヌードが流行らない最も重要な理由は、トラブルではなく、カネの問題である、ということだ。
もしカネになるならば、ギャラリーはトラブル覚悟で、ヌード写真展を決行するだろう。
ところが現在は、アダルトビデオ全盛の時代なのである。
ヌードだけでは、見る側は物足りず、売れなくなった。

私たちは、女性のセックスのビデオにはお金を出すが、女性だけのヌード写真にはお金を出さない。
したがって、ヌードの市場は成り立たない。
したがって、芸術写真としてのヌード写真もだめになった。
ギャラリーも、ヌード写真展をやらなくなった。

要するに、時代の流れで、そうなっているだけの話だ。




M84ギャラリーを出た後は、銀座駅から日比谷線で帰宅の途についた。
ただ、その途中、三ノ輪駅でおりて、樋口一葉記念館に寄り道をした。
記念館の脇の一葉煎餅で、意外と喜ばれる、おみやげの煎餅を買うためだ。

その後、涼しい館内で、しばし休憩。
館内のラウンジのテーブルで、ビニール袋に入った煎餅と、先ほど引いた福徳神社のおみくじを出した。

おみくじのなかみを開けてみるか!






え~と、、、何だ、これは(*'ω'*)!!!
おみくじの中に、糊付けされたおみくじがもう1枚、挟まっているではないか。
(100円払って、2枚取ったわけではない)

私は、内部のおみくじをていねいに剥がした。
内部のおみくじも8番だ。

私が引いたおみくじは、業者が糊付けに失敗したものだ。
おみくじは工場で番号ごとに生産されているのだろう。
8番のおみくじのラインで1枚1枚糊付けしていく工程でミスがあり、内部にもう1枚、入れ込まれて付着したのだと思われる。






<中吉>
願望 思いのほか早くかないます
失物 必ず出ます
旅行 どこに行っても良いでしょう
仕事 売るも吉、買うも吉
金運 大利あり
勝負 自ずと勝つ

今回は、8番中吉の2枚セット。
中吉のダブル!
中吉に凶が糊付けされていたりすると、こちらは理解に苦しむので、同じ内容で良かった。

思いのほか書いてあることがよすぎる。。。

勝負事は自ずと勝つとあり、願望も早くかなうという。
私は幸いにも健康だが、病気は信心で治るとは、薬いらずである。
ほとんど何事も、念ずればかなう、ということである。

しかし、これだけ何でも自然にうまくいくと書いてあるのに、恋愛は例外である。
思っているだけでは伝わらない・・・このことは、恋愛に関しては受け身ではうまくいかないという教訓を、私たちに与えているように思える。

これに対して、結婚は、待てばかなうとある。
だとすると、理屈としては、こうなるのでは?

例えば、私が大好きなAさんを指名すれば、その後、Aさんと結婚ができる、ということだ。
タイプの美女を指名し、席で待てば彼女が隣に来て、あとは彼女が事を全てうまく運んでくれる~キャバクラではあるまいし、そんなうまい話、あるとは思えないが、そう書いてあるのだから、期待してみるか。

私は、財布のポケットに、おみくじ2枚をしまった。
では、そろそろ樋口一葉に関する展示を見ることにしよう。








樋口一葉は、わずか24才のとき、結核で死んだ。
当時、吉原の近所に住んでいて、家族と一緒に駄菓子屋を営んでいた。
しかし、小説家も商売もうまくいかず、借金を抱えていた。
晩年は大御所の森鴎外などが彼女の作品を激賞したものの、まもなく彼女は病死し、作品だけが遺された。

それで、樋口一葉記念館には、彼女の小説のほか、当時の吉原の様子、例えば花魁(おいらん)に関する展示作品などもあるのだが、これが、なかなか面白いのである。
また、一葉の書いた小説のことは、ぜんぜん詳しくない私だが、作品ごとにあらすじが書いてあり、今回は、「花ごもり」に興味をひかれた。




「花ごもり」のあらすじは、上記のようなものである。

親のいないおしんは、いとこの家(母子家庭)に居候をしている。
そのいとことは両想いである。
しかし、立身出世のため、彼は良家のお嬢様との縁談を受け入れる。

おしんは、この家にいられなくなり、家を出る。
そして、奉公先・・・いまで言うと住み込みのバイト先で、画家夫婦から絵の手ほどきを受ける。
その後、彼女が職業画家になったのかはよく分からないが、彼女は恋しくなったとき、カンヴァスに彼の姿を描くという。

私は、「花ごもり」のあらすじを読んで、しばらく考え込んだ。
ええと、、、確か、最近見た展示会で、似たような話があったな。
私は、資生堂ギャラリーの展示会を思い出した。