東劇で、METライブビューイングオペラを見てきた。
以前、「連隊の娘」を見たことがある。
これはドニゼッティのオペラだった。
今回は「夢遊病の女(夢遊病の娘) La Sonnambula」で、こちらはベッリーニの作である。
ただ、どちらもベルカントオペラであり、音楽的に似ている。
つまり、美しい歌声を聴いてウットリするコンセプトのオペラなのである。
例えば、ワーグナーやプッチーニのような、派手で、ドラマチックで、豪快なオペラではない。
ベルカントオペラの代表的な作曲家は、ベッリーニ、ドニゼッティーのほか、学校の音楽室でお馴染みのロッシーニがいる。
本作「夢遊病の女(夢遊病の娘) La Sonnambula」は、スイスの山村が舞台である。
ただ、METのオペラは現代版で、舞台はブロードウェイの稽古場である。
ここで、ミュージカルの出演者たちが「夢遊病の女」の稽古をしている、という変わった設定である。
(METライブビューイングオペラアンコール「夢遊病の娘」)
大好きな男を美人にもっていかれるなんて、本当に頭に来る!!
箒を持って掃除中のリーザは、ひどく不機嫌である。
リーザは宿屋の女主人で、地位と権力のある男性が好みだ。
こないだまで、彼女は村の金持ちの息子エルヴィーノと付き合っていた。
が、結局、彼はアミーナのところにいってしまった。
そして今日は2人の結婚式当日である。
アミーナは、村一番の美女、村のアイドルである。
しかし、彼女は孤児で、幼い頃、水車小屋の管理人テレーザが引き取って育てた。
アミーナは、エルヴィーノと結婚すれば玉の輿、シンデレラガールだが、実は、夢遊病である。
この山村には、夜中、幽霊が現れるといわれているが、まさか、その幽霊の正体が、アミーナだったとは!
というような、あらすじである。
以下は、Wikipediaからの引用。
第1幕
第1場:村人たちがアミーナとエルヴィーノの婚約を祝っているが、宿屋の女主人であるリーザはアミーナに嫉妬する。アミーナは村人たちに感謝の歌を歌う。公証人、ついでエルヴィーノが現れる。エルヴィーノはアミーナに指輪と花を贈る。結婚契約が署名され、アミーナとエルヴィーノは愛の二重唱を歌う。
見知らぬ人物が村に現れる。彼は実は領主のロドルフォ伯爵だったが、村人は誰も彼のことを知らなかった。テレーザはロドルフォ伯爵に、この村は白い服の幽霊に呪われているから夜は家に帰らなければならないといい、人々は帰宅する。ロドルフォ伯爵がアミーナを好んでいるらしいと見たエルヴィーノは嫉妬からアミーナと喧嘩するが、やがて仲直りする。
第2場:リーザの宿屋に宿泊したロドルフォ伯爵は、窓から突然アミーナが入ってきたのに驚くが、すぐに夢遊病であり、テレーザの言っていた幽霊とは彼女のことであることに気づく。伯爵はアミーナを混乱させないように部屋の明かりを消して外に出る。アミーナはそのまま伯爵の部屋のベッドで眠る。
ロドルフォ伯爵の正体はすぐに村人にばれ、人々は伯爵にあいさつするためにやってくるが、部屋の中には女性の姿があった。リーザは事情を知っていたが、エルヴィーノの手を取って部屋にはいり、部屋の中を明かりで照らす。アミーナは目ざめるが、何が起きたかわからず混乱する。エルヴィーノほかの村人はアミーナが浮気したと思いこんで彼女を非難する。エルヴィーノはアミーナに結婚の破棄を宣言して去り、アミーナは気絶する。
第2幕
第1場:村人たちはロドルフォ伯爵の城館を訪れ、エルヴィーノとアミーナの間の仲介をしてくれるように頼もうとする。エルヴィーノはまだ怒っており、かつてアミーナに贈った指輪を彼女の指から外して奪う。
第2場:テレーザの水車小屋のそばで、リーザはエルヴィーノと結婚しようとしている。ロドルフォ伯爵はアミーナが夢遊病であることを説明して止めるが、エルヴィーノは信じない。表の騒音を聞いたテレーザが出てきて、アミーナが眠っているから騒がないように頼む。リーザがエルヴィーノと結婚しようとしていることを知ったテレーザは、ロドルフォ伯爵の部屋で拾ったリーザのハンカチを出してみせる。エルヴィーノはリーザも浮気していたと思って幻滅する。
エルヴィーノはロドルフォ伯爵に対して、アミーナが夢遊病である証拠を見せろというが、そこにテレーザの水車小屋の屋根裏の窓から眠ったままのアミーナが出てきて、ランプを手にしたまま歩きはじる。そのまま橋を渡って村人たちの前までやってくる。彼女はエルヴィーノのために祈り、自分が指輪を奪われたこと、かつてエルヴィーノから花をもらったことを眠ったまま話し、しおれた花を取りだす。
エルヴィーノは指輪をアミーナの指に戻す。目をさましたアミーナにエルヴィーノは謝罪する。アミーナは再び喜びに満ちる。
帰り道は喫茶店へ。
私は、ロイヤルミルクティー(?)を飲みながら、夢遊病のことを調べた。
そもそも夢遊病とは、どんな病気なのかしら?(*'ω'*)
夢遊病は、睡眠障害のひとつであり、精神疾患にあたる。
寝ている間に、歩いたり、何かをしてしまう。
眠っているので、本人は無意識で、何も分かっていない。
どこかに行ってしまわないように、頬を叩いて起こしたり、制止したり、刺激を与えてはいけない。
攻撃される恐れがあり、危険である。
よほどの場合は警察や救急車を呼ぶべきだが、そうでなければ見守るのがよい。
なるほど、、、酒癖の悪い酔っ払いみたいなものか。
泥酔中に何かやらかして、記憶にございません、これと同じようなものか。
あるいは、認知症の高齢者の徘徊にも似ている。
私は、もし彼女がそのような夢遊病だったら?と考えた。
伯爵とアミーナのように、狭い部屋に一緒にいる場合を考えてみる。
いつも良い夢、幸せな夢なら問題ない。
が、見る夢はコントロールできないから、もし彼女の夢が突然、悪夢に変わったら・・・例えば、大好きな男と一緒にいるときに大嫌いな男が登場すると、突然、殴られるかもしれない。
また、悪い夢でなくとも、厄介である。
例えば、料理と犬が好きな夢遊病の女と付き合っているとしよう。
彼女は夢の中で料理をしていて、肉や魚をさばいてるつもりだが、実際には台所の出刃包丁を振り回している。
また、彼女は夢の中で飼犬の散歩をしているつもりだが、実際、鎖で繋がれて連れ回されているのは、同居人だったりする。
まあ、実際そんなひどいことは起きないだろうが、一緒にいて危険というよりは、むしろ彼女をひとりにしけおけないということである。
(La Sonnambula: "Ah! non credea mirarti" (Natalie Dessay) 夢遊病の女「ああ、信じられない」ナタリー・デセイ)
最後の場面。
2人の仕切り直しの結婚式で歌われた、このような歌がある。
苦しみを乗り越え
無実が証明され
彼女は、より美しくなった
私は手帳を開き、夢遊病の女の雑感をメモした。
第1幕の結婚式のとき、アミーナが夢遊病であることを、本人も周囲も知らなかった。
もしこのまま結婚していたら、2人は大いにモメただろう。
しかし、紆余曲折を経て、彼女が病気であることが分かり、かえって良かったのではないか。
2人は愛し合っているので、彼女に重い病気があっても、2人の関係は揺るがない。
彼女のどのような障害も、彼の愛情をより確かなもの、深いものにするだけだった。
なるほど、、、分かった!(*'ω'*)
夢遊病の女は、病気や障害があり、愛を信じることができず、愛を確かめたい女のことだ。
愛しているという言葉や、結婚の申込や約束だけでは、愛の言葉だけ信じ、夢を見ている状態である。
純愛といえば素敵だが、愛は不確かで、手ごたえがない。
不確かな愛を確かめるにはどうすればいい?
それは、やはり肉体的に愛を確かめる行為が、必要になるのではないだろうか。