少し前の話だが、8月は夏風邪を引き、とにかく、しんどかった。
10日ほど寝込んで良くなったが、回復後も、咳が治らず、外出時はマスクの着用が当たり前になった。
また、なかなかモチベーションが上がらず、原稿の執筆に着手すらできなかった。
しかし、8月後半、あることがきっかけで、私は、行き詰まっていた原稿の執筆を再開した。
書斎に入り、ノートパソコンと向き合う。
マウスを手に持ち、数時間、キーボードを叩いた。
最初はゆっくりと、そして、だんだんそれは速くなった。
チョット書きはじめればどうってことなかったのだ!!
自分でもビックリだが、、、なぜだろう(*'ω'*)??
まあ、書ければヨシとしよう♪
原稿がほぼ完成したので、気分転換に、表参道のキャプランワインアカデミーに出かけた。
昼間に約束があり、市ヶ谷まで行った帰りだが、途中、喫茶店で休んでから、パソナの本社ビルに入ったのは18時過ぎ。
この日は、ワインではなく、日本酒のテイスティングだった。
よくある日本酒の飲み比べではなく、日本酒の古酒の飲み比べである。
日本酒の古酒というのは、あまり知られていないが、熟成ワインのようなものだ。
蔵元で一定期間寝かせられ、これにより、色みや、香り、濃厚さ、あるいは独特の味わいが醸成される。
新酒のようなシンプルな味わいではなくなるが、熟成ワインののような複雑さはないように思う。
私なりに表現すると、ユニークな日本酒という言葉が合う。
テイスティング開始。
私は、左から順番に1つ1つグラスを持ち、顔を近づけては、香りをとっていった。
しかし、風邪の影響で、咳が出てしまい、うまく香りをとれない。
そこで、少しずつ飲んで、ゆっくりと味わいながら、テイスティングを進めたが、日本酒はワインよりキツいので、酔いが回った。
ハアハア、、、とりあえず、ペットボトルのお茶を飲み、ひと休みしよう(*´Д`)
教室の左側はガラス張りである。
ここは、パソナの本社ビルの最上階なのである。
私は、窓から見える東京の夜景を眺め、しばらく、ぼ~っとしていた。
テイスティング再開。
私は、グラスを手に持ち、グラスのふちに、ゆっくりと口をつけた。
このグラスからは、鼻をクンクンさせなくても、明らかにチョコレート香(カカオ香)がする。
コーヒーの香りのするクラフトビールがあるが、あれと同じような感じである。
とてもイイ香りだ。
しかし、チョコレート香(カカオ香)が強すぎるのではないか。
また、その甘い香りに反し、味は意外と辛口で、全体的に私好みではなかった。
結局、私は、薔薇の蜜のような華やいだ香りのする、私好みの甘ったるい味わいの3番目のグラスの日本酒を最高評価とした。
評価の終了後は、おかわりもできて、私は、さらに酔っ払った。
余りのボトルが自分に回って来ると、注がずに次の人に回すと損な気がして、ついつい、注いでしまう。
そして、目の前の酒は、ついつい、飲んでしまうものだ。
パソナビルを出たのは、8時過ぎ。
帰り道は、外苑前駅まで歩いたが、まだ野球の試合は終わっておらず、駅は空いていた。
銀座線で上野駅へ。
電車内では、寝ないように、いろいろ考え事をした。
主に、原稿のことを考えた。
テーマは、原稿の執筆の停滞と進展についてである。
物事には停滞が付き物だ。
長い停滞期があり、それを経て、状態が良くなったり、悪くなったりする。
だから、停滞中に何をするのかが重要。
上手に停滞させれば、停滞中、別の部分で進展が見られる。
それが全体に波及し、全体が良くなる。
まず、停滞中も、完全に離れてしまわないことが大事だ。
今回の原稿は締切があるから、私は常に締切を気にして、書斎にあるパソコンで原稿を書きたい気持ちが維持されて、想いが続いたのだ。
ただ、気持ちはあるのに、実際、体調が悪く、身体が動かなかった。
それを、もどかしいと思ったりせず、受け入れて静かに過ごせたのが、良かったのだと思う。
個人的に思うのは、物理的に離れてしまうと、やはり、関係は疎遠になってしまうということである。
しかし例えば、何かの機会にチョット顔を出すとか、連絡をしておくとか、プレッシャーを与えておくとか、些細なことでいいのだが、何らかのカタチや方法で、物理的に繋がりを維持しておくと、物事は終わらないし、ビミョウな関係が続く。
ビミョウな関係とは煮え切らない、ある種のストレスなのだけれども、新しいところには行きにくくなる、長い目で見ると、ふらりと元の場所に戻ってきてしまう可能性が高まる。
つまり、これは相手を見えない鎖で繋いでおくということなのである。
例えるなら、別れた男女のその後の肉体関係の継続や、以前の顧客への近況報告をかねたメールなどもそうである。
ビミョウな関係というのは、ビジネスでもプライベートでも非常に意味のあることではないだろうか。
だから、もし自分がその関係を終わらせたくないと望むなら、希薄でも、このようなビミョウな関係を維持しておくのがよい。
次に、停滞と進展、、、それはちょうど晴れの日と雨の日が交替でやって来るようなもので、ひとつのサイクルや周期になっている。
停滞期を脱したら、少しずつ動き出さなければならない。
大事なことはまず、精神的に「やりたい」「やらなきゃ」と強く思うことだ。
そして実際、その想いを行動に移す。
私の場合は、パソコンに向かって原稿を書くということだったが、これは、物理的に向き合い、肉体的に接着することが進展の決め手になることを意味するのだと思う。
翌日は雨。
朝起きると、きのうの日本酒の酔いがまだ残っていた。
雨のなか、買い物に行き、喫茶店に入った。
晴耕雨読というが、改めて考えると、なかなか奥深い言葉だ。
雨の日は、本を読み、静かに過ごす。
外の畑は耕せないから停滞といえばそのとおりだ。
しかし、その間、本を読んで知を蓄え、準備をすれば、停滞ではない。
私も、晴れの日の到来を待って静かに本を読むことにした。
森茉莉「甘い蜜の部屋」。