(八代教授「日本経済研究会」資料より)
昭和女子大学現代ビジネス研究所には、有志の参加する「日本経済研究会」という勉強会がある。
講師は、介護保険制度の創設や、小泉竹中構造改革にも関わった八代尚宏教授(労働経済学)である。
生徒は少数精鋭だが、私以外は、スゴい人たちばかりである。
(講師)
八代尚宏教授
(司会進行)
K先生
(生徒)
内閣官房のA氏
財務省のB氏
元シンクタンク社長のC氏
元保険会社社長のD氏
元銀行取締役のE氏
あんみつ先生(*'ω'*)///ハ~イ!!
八代先生の講義は、私のような者にも大変分かりやすいもので、世間一般に誤解されていることが、どうして誤解なのかも含め、よく分かった。
以下、要注目の内容をピックアップしていきたい。
私の出した感想を一部紹介することにもなるが、基本的には、八代先生の講義の内容及び見解に則した、まとめ的なものとなっている。
(八代教授「日本経済研究会」資料より)
まず、第1回「イントロダクション」から。
日本社会の格差は拡大し、貧しくなっている。
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(参考文献:八代教授「日本経済研究会」資料より引用)
そんな中、構造改革という言葉は死語のようになっており、構造改革に無関心な人が多いかに見える。
だが、実は、私たちは変化のない現状にイライラしているのではないか。
改革の気運が高まるようなキッカケがほしい。
何かキッカケがあるとすれば・・・そう、いつものように、アメリカからの外圧しかなさそうだし、消費者の利益を考えると、それがいい、ということになった。
また、高齢化社会では、高齢者よりも、若者に活躍してもらう必要がある。
「もう年だから、新しいことはしたくない」「きのうと同じことをしていたい」「ぼ~っとしていたい」、高齢になれば誰だってそうなる。
今後の日本社会は、高齢者を優遇すれば、さらに保守化、内向きになり、悪くなるだろう。
しかし、そもそも多数派を優遇するというのはどうなのか。
少数派を優遇しなければ、世の中はバランスがとれない。
特に、経営者や政治家や会長など、権力的ポストに高齢者が居座っているのは、理由の如何を問わず問題である。
高齢化社会だからこそ、高齢者は重要なポストから引退し、若返りをさせるのが大事、ということになった。
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(参考文献:八代教授「日本経済研究会」資料より引用)
続いて注目は、第2回の高度経済成長期の研究である。
企業が内部留保を溜め込み、労働者に分配しないことで経済が⾧期停滞しているという考え方があるが、本当にそうなのか。
上のグラフを見ると、好景気のときの日本企業の労働分配率は低いが、不況時は社員の雇用を守るため分配率が高くなる傾向が認められる。
これは、不況期に企業は苦しくても従業員に給料をちゃんと支払っている、好況期には企業は儲かっているが従業員に給料をそれほど支払っていないということを意味する。
普通なら逆になるべきだが、こうやって、日本企業は、バランスをとりながら従業員の雇用をうまく守ってきたわけである。
共産党などがよく言う、大企業の経営者は株主の味方をしており、労働者から搾取しているという主張は、どうも怪しい、ということになった。
また、ほとんどの大企業ではサラリーマン社長が経営しており、そうであれば、労働者に寄り添った経営をするのは、自然なことだ、ということになった。
(参考文献:八代教授「日本経済研究会」資料より引用)
第4回は、バブルの形成と崩壊についての講義だった。
ここでは、構造改革をするタイミングが問題になった。
不況であれば出血を伴う構造改革の実行は困難だ。
しかし、好況であれば、順調なので構造改革をする必要がないといわれてしまう。
では、私たちは一体どのタイミングで構造改革をすればよいのだろう?
困っている人のためには、財政赤字を増やしてでも福祉制度を拡充し、助けることは必要である。
そのため、いよいよになるまで、福祉を切り下げるような痛みの伴う改革は難しそうである。
また、現在の日銀は、金融緩和をして、株価対策を非常に重視していると思われる。
株価を気にする理由は、政治的に、株価が上がっていれば日本経済は順調というストーリーが描けるからだろう。
日銀自身も、これまで大量のETF買いで株式市場を買い支えてきたわけだし、それとの整合性や、NISA、iDeCoなどで国民が自分年金のために株式をしこたま保有しているという事情もある。
これだと、株価維持のため、すぐに金融緩和をやめるのは難しい、ということになった。
意見交換の時間(発言は要約)。
「黒田さんの始めた異次元の金融緩和は、やらなくてもよかったのではないか。あとになって大変なことになると思っていた。もうそうなっているが・・・」
「白川さんは、委員会に出席して、政府に対して、構造改革をするよう何度も求めていた。日銀が金融緩和をしている間、政府が構造改革をやり遂げるというのが、金融緩和をする前提であり、約束だったはず。しかし、実際、政府は日銀との約束を守らなかった。つまり、悪いのは日銀ではなく、約束を破った政府の方である」
「80年代バブルのときは、マスコミに煽られた部分も大きかった。橋本さんや小泉さんの改革、規制緩和の気運を作ったのもマスコミだった。しかし、いまのマスコミは、どうなのか。日経新聞以外、読者に迎合していて、ぜんぜんダメ、、、」
次回の記事は、小泉政権と郵政民営化、構造改革特区についてである。